【ニュースリリース】日本ガイシと協働し機械学習ポテンシャル作成への量子コンピュータ有効性検証を実施
- 田中拓哉
- 5月7日
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2025年5月7日
株式会社Quemix
当社は日本ガイシ株式会社(以下、日本ガイシ)と協働し、材料計算分野において量子コンピュータを用いた機械学習ポテンシャル生成技術の検証を実施しました。将来量子コンピュータが実用化された際の具体的な応用先を日本ガイシが材料メーカーの視点で検討し、当社が 計算ターゲット材料が有する対称性を備えた機械学習ポテンシャルである、“等変性”量子ニューラルネットワークを開発し、その有効性を協働で検証しました。本成果を、2025年5月7日(水)にarXivにて“Towards Improved Quantum Machine Learning for Molecular Force Fields”というタイトルで公開しました。
機械学習ポテンシャルは、大規模な計算を高精度に実行できる手法として、材料計算分野において近年大きな注目を集め、実適用が拡大しています。しかし、機械学習ポテンシャルには、モデルの構築時にかかる計算コスト(例えば、計算時間)が大きいという課題がありました。そこで、広大なヒルベルト空間を表現可能な量子機械学習 の適用について技術検証を開始しました。量子コンピュータの構成要素である量子ビットは、古典コンピュータ中のビットと比べて豊かな表現能力を有しているため、古典コンピュータよりもはるかに少ないビット数で高精度な機械学習ポテンシャルを構築することが期待されます。また、機械学習ポテンシャルを構築する際には、計算する材料系が持つ対称性を自然にモデルに反映(“等変性”を有する形式)させることで、計算が高精度化 することが報告されています。これらを掛け合わせた “等変性”を持つ量子ニューラルネットワーク(等変性QNN) を開発し、実際に4種の分子に対して機械学習ポテンシャル構築しその精度を検証しました。その結果、今回開発した等変性QNNが、従来型の量子ニューラルネットワークに比べて機械学習ポテンシャルの予測誤差を低減し、予測モデルの信頼性の指標である決定係数が改善することを確認しました。本研究で用いたビット数(最大12量子ビット)では古典コンピュータで構成された機械学習ポテンシャルの精度には及びませんでしたが、等変性QNNが量子コンピュータで機械学習ポテンシャルを構築する際の1つの有効な技術であることが示されました。今後、さらなる研究開発の進展によって量子コンピュータによる機械学習ポテンシャル構築は重要なテーマになっていくものと考えられます。
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