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スパコン専用の材料計算ソフトをAWS基盤でクラウドサービス化 Quloud- RSDFTで日本の材料開発研究を加速

Quemixは、2022年5月31日に材料計算クラウドサービス『Quloud-RSDFT(読み方:キュラウド・アールエスディーエフティ)』を提供開始します。Quloud-RSDFTは、ACM Gordon Bell Prize(ゴードンベル賞最高性能賞)を受賞するなど評価が高いスーパーコンピュータ専用の材料計算ソフト「RSDFT」を、研究者が専用機を利用しなくても、同等レベルの大規模な材料計算*1を可能にしたクラウドサービスです。

 

RSDFTについて


RSDFTは、現在Quemixの社員である、Quloud-RSDFTのプロダクトマネージャー岩田潤一によって開発されました。

材料の第一原理シミュレーション*2では、これまで「高速フーリエ変換*3」アルゴリズムを用いて行うのが一般的でしたが、アルゴリズムの特性上、並列計算による大規模並列計算処理を実行することが難しく、原子100個程度のオーダーでモデル化して計算しているケースが殆どでした。

RSDFTは、密度汎関数法*4に基づく原子レベル材料計算プログラムであり、実空間グリッド*5で計算を行います。数万並列という規模の超並列計算を効率よく実行することができるのが特徴で、原子数1000個〜10,000個というオーダーの大規模なモデルを扱う事ができる画期的なプログラムとして、シリコンや化合物半導体等の大規模材料計算を行う研究者を中心に活用されていました。


【Quloud- RSDFT開発背景】

計算材料科学とIT最新技術によって、日本の材料開発に貢献するというビジョンを持つQuemixは、AWSのハイパフォーマンスコンピューティングサービス*6でRSDFTを動かせることを確認し、より多くの研究者に大規模な材料計算を行ってもらうための環境を構築しました。

Quloud-RSDFTで材料計算を行う場合は、Quloud-RSDFTサイト( https://www.quemix.com/quloud-rsdft )にログインすることで、一般的なPCで量子力学的第一原理材料計算のモデリング、計算、解析までをノンストップでおこなえます。計算後のモデルを可視化しており、RSDFTに比べ研究者自身の操作、計算結果の分析までを飛躍的に簡素化しています。


【今後の展開】

Quloud-RSDFTは、教育機関(付属する病院、研究機関)、国や独立行政法人のほかに、一般企業の研究開発部門における活発な利用を想定しています。

数年後には量子コンピュータ基盤への移行が実現できると見込んでおり、Quemixオリジナルなアルゴリズム量子虚時間発展法*7を組み込んだ新しい材料計算ソフトウェアの提供、日本の量子コンピュータビジネスの活性化、および新材料の開発による社会課題解決に貢献してまいります。


本サービスは、2022年5月31日から提供を開始し、3年内で50社(団体)の利用を目標にしています。


用語解説


*1 材料計算とは

物質・材料開発のための計算機シミュレーションのこと。近年、シミュレーションやデータ科学を用いることにより、新物質・新材料開発を加速しようという研究・開発がなされている。または、量子化学計算と呼ばれることもある。背景として、「京」や「富岳」コンピュータを代表とする大規模高並列化計算機や計算手法の発展があり、現実に近いシミュレーションができるようになったことが挙げられる。また、近年、進展が著しい量子コンピューティング技術をどのように物質材料探索に活用していくかの検討も重要課題と位置付けられています。(計算物質科学協議会から一部抜粋.)


*2 第一原理シミュレーションとは

基礎物理定数以外の実験値に依存しない量子力学に基づいた計算手法のこと。第一原理シミュレーションを行うことにより、実験合成に先立ち物質の性質や特性を予言・解析することができる。そのため、実験的に直接観測が難しい解析や、新物質探索などへの活用が期待されている。


*3 高速フーリエ変換とは

フーリエ変換を計算機上で高速に計算するアルゴリズムである。フーリエ変換は、与えられた信号をいくつかの周波数成分に分解する手法であり、信号処理や音響・振動解析、暗号、などさまざまな場面で使われている数理アルゴリズムである。


*4 密度汎関数法とは

密度汎関数理論に基づいて系のエネルギーや種々の物性を計算する手法全般。密度汎関数理論は、電子密度の情報から系のエネルギーや物性を計算できることを示したHohenberg-Kohnの定理によって理論的基盤を得た。また、物質の特性・機能を原子や電子のレベルまで掘り下げて理解することができる。(MateriAppsのキーワード解説から一部引用.)


*5 実空間グリッドとは

密度汎関数法計算を実行する際に用いられる方法の一つ。実空間をメッシュで切り、各点での電子状態の記述を行う方法。高効率大規模並列計算の実装に向いていることや、境界条件の自由度の高さが特色である。実際の電子状態計算では、電子状態が従う方程式が差分方程式として表現され,これを適当な補間法 (有限要素法やスプライン補間法など) のもとで解くことになる。(MateriAppsのキーワード解説から一部引用.)


*6 AWSのハイパフォーマンスコンピューティングとは

ハイパフォーマンスなファイルシステム、高スループットなネットワークがクラウドで提供されたシステム。大規模で複雑なシミュレーションをクラウド環境で実行することを可能にしています。


*7 量子虚時間発展法とは

量子コンピュータの性能を最大限に引き出すべく、世界中で開発が進められているアルゴリズムの1つ。Quemixはその初期から本アルゴリズムに注目し、量子虚時間発展法の研究開発に大きく寄与している。その適用範囲は、材料計算(量子化学計算)のみならず、最適化問題など幅広く活用が可能で、大きく注目されている。

 

Quloud-RSDFT 開発者:岩田潤一

専門:材料計算、ハイパフォーマンスコンピューティング


【経歴】

2002年3月 筑波大学大学院数理物質科学研究科博士課程修了

2002年 –  産業技術総合研究所研究員、筑波大学数理物質科学研究科助教

2011年 –  東京大学工学部物理工学科特任講師

2018年 –  計算科学技術系企業入社

2021年 –  株式会社Quemix入社


【受賞歴】

2011年11月 ACM Gordon Bell Prize


Quloud- RSDFT


サービス提供価格

一般:初期登録料 ¥200,000 / 年間使用料 ¥1,200,000~

アカデミック:初期登録料 無料 / 年間使用料 ¥600,000~




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